古代ローマの神々
Last modified: Sun, 12 Jan 2003 19:08:47 +0900

古代ローマの神々

 こんにちは、稲村です。私は古代ローマが大好きです♪。その割には、ローマの宗教についてはよく知りませんでしたので(ギリシャ神話と同じだと思い込んでいたのですが、細かい所でけっこう違うんですね(^^;))、勉強がてらイラストなぞを描いてみました。
 カエサル関係の本を読んでいて思ったのですが、あんなに合理的で実際的な国民性なのに、何事か重大なことを決める時には、ローマ人ってけっこう占いをやったり、験を担いだり、神々に犠牲を捧げたりしているんですよね。カエサルの著作や彼について書かれたローマ時代の書物にも、宗教関係のエピソードが頻繁に登場します。そういうわけでローマ人の宗教についての、なにか説明があった方がいいなと思いまして、今回このようなページを作る次第となりました。
 ローマは、ホメロスの詩で有名なトロイア戦争において、ギリシャ軍と戦ったトロイアの英雄アエネアスを祖とします。アウグストゥス(オクタウィアヌス=カエサルの養子)時代の大詩人ウェルギリウスの『アエネイス』では、アエネアスは女神ウェヌスの息子と詩われており、トロイア陥落後は新しい国を創るべく、神の導きに従って残兵を率いてローマを目指しました。以上の事からおわかりのように、古代ローマの神々は古代ギリシャの神々と呼び方こそ違いますが基本的には同じ神様です。ローマ人は、古来より信仰されてきた土着の神と性質のよく似たギリシャ渡来の神を同化させ、信仰したようです。(このあたり、日本の神仏習合の考え方とよく似ていますね。)
 日本で馴染みのよいギリシャ神話の神名はローマ名を英語読みにしたものです。たとえばヴィーナス(venus)=ウェヌス(ローマ名)=アプロディテ(ギリシャ名)。意外にもローマではアポロ(アポロン)の人気は薄く、アウグストゥスが自分のイメージキャラクター(笑)に使うまでは、むしろマイナーな神様だったようです。
 ローマ神話と言っても、ただ単に神様を紹介するだけでは物足りないので、私の大好きなカエサルくんにからめてご紹介することにしました(笑)。カエサルに関するエピソードに登場しない神様につきましては、触れられないこともあるかと思いますが、どうぞお許しくださいませ。
 モノクロなのでいまひとつ華やかさに欠けますが、お時間の許す限りごゆっくりご覧くださると幸いです。そしてまた、できればご感想のメールなどいただけましたら、感激いたしまする(うるうる)。



ユリウス=カエサルの略年表
カエサルに関する出来事関連する神解説
B.C.100年7月13日

ガイウス=ユリウス=カエサル、誕生。 父はガイウス=ユリウス=カエサル、母はアウレリア。

 ウェヌスはギリシャ神話ではアプロディテ。英語ではヴィーナスという名で有名な、美と愛の女神。火と鍛冶の神ウォルカヌス(ヘパイストス)の妻。軍神マルス(アレス)との情事が有名だが、ほかにトロイアの武将アンキセスとの間にローマの祖となるアエネアスを産んだ。聖木はミルト、薔薇、芥子など。彼女を表わす聖なる鳥には鳩、白鳥などがある。
 カエサルはこの女神の末裔であることを、ことごとくアピールした。ローマの祖アエネアスの息子はユルス(またの名をアスカニウス)といい、この人がユリウス氏族の先祖に当たるといわれている。古代ローマの詩人オウィディウスによると、カエサルは暗殺された後、この女神によって天上界に運ばれたそうである。

B.C.87年

カエサル13歳、ユピテル祭司となる。

 ユピテルはギリシャ神話ではゼウス。英語ではジュピターという名で有名な最高神。天空を支配し、雷光を司る。また正義や名誉などの美徳を象徴し、彼に祈願するあらゆる戦士たちの守護神である。鷲が聖なる鳥。兄弟には冥界の王プルト(ハデス)と海神ネプトゥヌス(ポセイドン)がいる。
 彼の妻ユノ(juno)はギリシャ神話ではヘラに当たる。ユピテルと同父同母の姉で、女性・結婚・出産・家庭生活の守護者である。孔雀が彼女の聖なる鳥。非常に嫉妬深く、ウェルギリウスの長編詩『アエネアス』の中での、ウェヌス女神の息子アエネアスに対する意地悪ぶりは、面目躍如たるものがある。

B.C.84年

カエサル16歳、父の死去。カエサルはキンナの娘コルネリアと結婚する。

   
B.C.82年

カエサル18歳。独裁官スッラの敵・マリウスの義理の甥に当たるため、 抹殺リストにその名を挙げられていたが、 ウェスタの聖処女の嘆願のおかげで助命を認められる。

ウェスタ
(vesta)

 ウェスタはギリシャ神話ではヘスティア。カマドと燃える火の女神。ユピテル大神の姉で、家庭・ローマを守護する。ローマにおいては非常に尊崇された女神で、都心の一等地に神殿と彼女に仕える巫女たちの施設を持っていた。
 ウェスタ女神に仕える巫女たちはウェスタの聖処女と呼ばれ、政府の高官並みの尊敬と待遇を受けた。

B.C.70年

カエサル30歳、会計監査員となり、ヒスパニアに赴任。帰国後、元老院議員となる。

   
B.C.63年

カエサル37歳。大神祇官に当選する。カティリーナの陰謀事件が発覚。

 大神祇官とは、古代ローマの宗教世界において、その頂点に立つ官職である。任期は終身。さまざまな宗教部門を担当する神祇官たちを統率する。官職と書いたのは、この神職も他の政務官と同様に選挙で選ばれる、国家の官職だからである。カエサルが37歳にして当選するまでは、この官職には執政官経験者が就任することが多かった。
 この項では、カエサルに関わるエピソードが残されてはいないけれど、ローマにおいて重要な地位を占めた神々を紹介する。カエサルが大神祇官になった以上、無関係ではありえない神々である。

B.C.62年12月

カエサル38歳、法務官に就任。Bona Dea(善き女神)の祭において、カエサルの妻・ポンペイアの密通が発覚。

ボナ・デア
(Bona Dea)

 Bona Deaとは直訳すれば『善き女神』のこと。ファウナ女神(森の神ファウヌスの女性版)と同一神とも言われている。ローマの古い神で豊穰の女神。
 この女神の祭は女性だけで夜通し行われる。執政官もしくは法務官職にある人の家で行われるが、男子禁制の祭であるため彼の妻が主催者となる。この祭の間は、その家の男性は執政官もしくは法務官その人でさえも家から追い出される。
 プルタルコスはこの女神のことを「樹木の精ドリュアスのことで、ファウヌス神の妻であった」と伝えている。またその祭は「祭壇を据える小屋を葡萄の枝で蔽い、この女神のそばに神聖な蛇を祭る」と伝えている。

B.C.60年

カエサル40歳、ポンペイウス・クラッススとともに第一次三頭政治を開始。

   
B.C.59年

カエサル41歳、執政官に就任。

   
B.C.58年~50年

カエサル42歳〜50歳、ガリア戦争。

   
B.C.54年8月

カエサル46歳。ポンペイウスに嫁した娘ユリアがお産のため死亡。ユリアの遺体は民衆によってマルス広場に運ばれ、そこに葬られる。

 マルスはギリシャ神話ではアレス。英語ではマーズ。軍神。ギリシャ神話では無謀な戦いや敗北といった戦争のマイナスイメージを表わす。ミネルウァ(アテナ)が戦争における勝利やその後に訪れる平和などのプラスイメージを表わすのとは対照的。彼には不和と争いの女神・ディスコルディア(エリス)が付き従う。
 ローマにおけるマルスは、初代の王ロムルスの父であり、ローマの守護神でもあったので、ギリシャ時代よりも評価がかなり上がる。彼にはディスコルディアとともに、勝利の女神ウィクトリア(ニケ)と調和の女神コンコルディアも付き従っている。

B.C.49年

カエサル51歳、ルビコン渡河。ローマは内乱に突入する。

   
B.C.48年8月9日

カエサル52歳。ポンペイウスとの最後の決戦・ファルサルスの戦い。

 ウィクトリアはギリシャ神話ではニケ。ウィクトリアは英語ではヴィクトリア、勝利の女神である。女神ミネルウァ(アテナ)に付き従い、彼女が決定した勝利を告げるために天空を翔けて戦場を訪れる。
 ミネルウァ(Minerva)は、ギリシャ神話ではアテナ。ユピテル大神の娘で、知性と戦いの処女神である。鎧兜に身を固め、手にした楯(アイギス)には女怪メドゥーサの首がはめ込まれている。ふくろうが聖なる鳥。ユピテル大神・その妻ユノとともに、ローマでは『カピトリウムの三神』と呼ばれて尊崇された。

B.C.44年1月

カエサル55歳。この年の3月18日にパルティア王国遠征に出発することを公式発表する。しかし、3月15日にカエサルは暗殺され、3月18日は、奇しくも彼の火葬の日となってしまった。

 アポロはギリシャ神話ではアポロン。大神ユピテルとラトナ女神の息子。太陽・理性・秩序・調和・音楽・芸術・医術の神。よく竪琴を手にした姿で表現される。彼の神殿があったデルポイの地は『宇宙の中心(オムパロス)』と呼ばれ、この地で巫女の口を借りてくだされる神託は、絶対的な重みを持って受け取られていた。ローマにおいては、アウグストゥスが自分のイメージキャラクターに使うまでは、なぜかあまりメジャーではなかったらしい。
 彼の双子の妹はディアナ(Diana)で、ギリシャ神話ではアルテミスに当たる。狩猟の女神としてはディアナ、月の女神としてはルナ(Luna)、月のない闇夜の女神としてはヘカテ(Hecate)という名で呼ばれる。よく弓矢を携えた姿で表わされる。誇り高く、侮辱する者は許さない。女神ミネルウァ(アテナ)を尊敬し、彼女に倣って処女を守っている。

B.C.42年1月1日

元老院、カエサルの神格化を決定する。

 ガイウス=ユリウス=カエサル、神となる。人類史上を眺め渡しても、これほど卓越した能力を持っていた人間は、稀である。もうひとり名前を挙げるとすれば、アレクサンドロス大王がその才能に恵まれた人間であろう。プルタルコスが『英雄伝』の中で、アレクサンドロス大王とカエサルを対比して述べていることは、彼の見識の高さをよく表わしていると思う。