★ウェスタ★
(Vesta)
Last modified: Wed, 03 Oct 2001 14:33:56 +0900

ウェスタの聖処女

 ウェスタの聖処女というのは、ウェスタ女神に仕える巫女のことです。ウェスタ女神はカマドの女神(ギリシャ神話ではヘスティア)で、古代ローマでは、この女神が非常に大切にされていました。ウェスタは他の神々がギリシャの影響を受けて早々と神像に刻まれたのに比べて、非常に後(紀元前1世紀頃)になるまで神像を持ちませんでした。神殿にある彼女の依代は、長くカマドに燃える火でした。
 ウェスタの聖処女は、6歳以上10歳未満の、はじめは貴族の娘から選ばれていましたが、後には平民の娘からも選ばれるようになりました。彼女たちは30年間処女を守り、ウェスタ女神に仕え、その神殿のカマドの聖火を燃やし続けなければなりませんでした。そのかわり、彼女たちは非常に高い社会的地位と特権を与えられました。彼女たちと道で行きあえば、すべての人が(たとえ執政官であっても) 道を譲らなければなりませんでした。また、ファスケース(ファッショ・ファシズムの語源)を持つ儀杖兵に先導されることが認められていました。この儀杖兵は国家の高官だけにしか認められていませんでしたから、彼女らがどれほど崇敬されていたかがこれを見ただけでもわかります。また、死刑の判決も彼女たちのひとりでも反対すれば無効になりました。カエサルもウェスタの聖処女の異議のおかげで、スッラの粛正から逃れられたのは『Venus Victoricus Vol.1』で書いたとおりです。
 しかし、純潔を汚した時の罰はすさまじく、生き埋めにされました。ロムルスとレムスの母親も王女の身ながらこの罰を受けて土中に埋められました。処刑は、コルリナ門の傍に作った地下室にランプと少量のパンや水と共に罪を犯した巫女を入れ、その上から土をかけたのだそうです。やがてランプが消え、命を終えるまで続く暗闇と静けさの中で、飢えながらひたすら死に怯え続けなければならないというのは本当に残酷ですね。